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第7回前橋トライアスロンフェスタ〈パラ部門〉参加者の挑戦レポート

  • イベント報告

“日本一やさしいトライアスロン”としてキッズやビギナー層に支持されている「前橋トライアスロンフェスタ(以下、前トラ)」が今年も、正田醤油スタジアム群馬周辺で開催され、Challenge Active Foundation(以下、CAF)は『パラ部門』と『チャレンジビギナー部門』の監修・協力を担いました。

2023年10月22日に開催された第7回大会には1歳から81歳までの“トライアスリート”が参加。なかでも、『パラ部門』にエントリーした参加者たちはどんな思いでこの大会にチャレンジしたのか――さわやかな秋晴れの下、笑顔がはじけた一日をレポートします。下肢機能障がい、知的障がいなどがある参加者8人がエントリーした『パラ部門』(スイム25m、バイク3.0㎞、ラン800m)は全員が完走しました。

スイムでエンジョイする宮浦さくさん。これまで数々の障がい児向けイベントに参加してきたが、成長するにつれて参加できる大会が減っているといいます


「障がいに合わせて配慮するところは配慮して下さり、できるところは自分で頑張る。まさに、やさしいトライアスロンです」こう語るのは、宮浦咲空さんの母、めぐみさん。アンジェルマン症候群を患う咲空さんは、幼い頃からお風呂やプールが大好き。4歳からプールに通うようになり、元は水泳選手だった木村潤平(CAF代表)と出会ったことがきっかけで、昨年から「前トラ」に参加しています。

3種目目のランでは、風を全身に感じて楽しんだのはもちろんのこと、「人が好きすぎるので、観客や参加者に見られる経験が彼女にはすごく刺激になるんです」とめぐみさん。咲空さんとともに、笑顔でフィニッシュラインを駆け抜けました。

翌日に予定している伊香保温泉旅行も含めて大会を楽しんだ宮浦さんファミリー

現役パラトライアスリート・木村潤平と同じ型のハンドバイクをCAFから借りてトライアスロンを楽しんだ上床悠太さん


今回、2度目の出場となる小学4年生の上床悠太さんは、今大会を楽しみに3ヵ月前からトレーニングに励んできました。

「けっこう根性があるんだな、とわが子ながらにすごいと感じました」と父の岳史さんは、目を細めます。そして迎えた本番。悠太さんは緊張した面持ちで1種目目のスイムを泳ぎ切ると、「スピードが出るから、いちばん楽しみにしていた」という2種目目でハンドバイクに乗り換え、風を切って漕いでいきます。事前に相談できる機会があったため、ハンドバイクを借りることができ、レース当日の楽しみが増えたといいます。

最終種目でスタジアムに入ってきた悠太さんは「イエーイ」と両手でピースをつくって達成感を表現し、「前回よりタイムを縮められた。来年はもっと早い記録を出したい」と早くも次なる目標を口にしていました。

「これなら息子にもできそう」と大会参加を決めた小宮佑都さんの父は「想像以上の出来。水泳から最後のランまで本当によく頑張ったと思う」と佑都さんの可能性に驚かされた様子


その上床さんの友人で、今回初めて参加した小宮佑都さんも、達成感に満ち溢れていた。フィニッシュ後、感想を聞くと、笑顔で「よくできましたー!」と答えてくれた佑都さん。苦手意識のあった水泳も「一番がんばりました」と振り返りました。

そんな佑都さんの父、周さんは「はじめは参加することに前向きになれなかったし、不安もあった」と明かしてくれました。

「最初は(総排泄腔外反応症、下肢機能障がいのある)息子に本当にできるのか不安もあったので、事務局に電話しました。事務局からはそれぞれのやりやすいスタイルで大丈夫だと背中を押していただいて。その後も何度も電話で相談に乗ってもらい、最後は本人以上に親が『ヨッシャー』とやる気になっていましたね(笑)」実際にスイムからバイクへのトランジションでは、父の周さんが佑都さんを抱きかかえて走るなど、自分たちができる方法で初トライアスロンを完走。

「やればできる、というのを実感しました。水泳もほかのこともこれから力を入れてがんばっていきたいと思います」親子のチャンレンジは続きます。

佑都さんに「完走したご褒美は?」と尋ねると、「やっぱり焼きそばでしょー!」と即答。表彰式のあと、会場周りのキッチンカーでお父さんに焼きそばを買ってもらい満足そうでした


そして、今大会に“チーム”で参加した髙濱丈太朗さんも、見事完走。フィニッシュ後、おそろいのTシャツで伴走した松本壮太さん、林隼人さんらとともに、リラックスした表情で集合写真に納まりました。

「幸せな気持ちで走れました。これを機に3人で走ったりしたいですし、アスリートの気持ちが芽生えてきました。次は海外かな、ホノルルマラソンにも挑戦したいです!」

スタート前の高橋チーム。父の正伸さんは「とにかく道を間違えずに……ゴールに辿り着ければ歴史だと思う!」と激励


4歳で初めてプールに入ったという丈太朗さん。バスケット、サッカー、陸上など多くのスポーツに取り組んできたといいます。

「何でもやれば楽しい。過保護、過干渉になるのではなく、経験させていくことが大事だと思っています」と熱っぽく語るのは丈太朗さんの父、正伸さん。

「こんなに重度の脳性麻痺者がトライアスロンなんて『無理でしょ?』と驚かれるかもしれないが、後に続く子どもたちのために道を拓くのが、この男の使命。こういったチャンスがあり、チャレンジができる環境があることが本当にありがたいです」

最後の150mは車いすを足で漕ぐタイプに乗り替え、ゴールテープを切った丈太朗さん。

3人は普段から旅行をするなど、いろんなことを一緒に楽しんでいる「ブラザー」な間柄。
「ジョー(丈太朗さん)と一緒に過ごしているとこれまで知らなかった新しいことにも気づくことができます」


「優しい空気に包まれて走りきることができました。最初の大会がこの大会でよかった。この大会がすべての始まりになると思います」

チーム皆の笑顔がはじけました。

幼い頃からプールに通ってきた丈太朗さん。チームの2人もともに練習し、大会に臨みました


今回、新たに8名のパラトライアスリートが誕生した前橋トライアスロンフェスタ。

CAFでは「できない」と思うようなことも「できるかも!」「チャレンジしたい」と思ってもらえるよう、『パラ部門』『ビギナーチャレンジ部門』を全力でサポートをしています。

また来年、新たな出会いに思いを馳せながら、大会は幕を閉じました。

※このイベントのパラの部は「赤い羽根 新型コロナ感染下の福祉活動応援全国キャンペーン」の『重症児等とその家族に対する支援活動応援助成』を受け運営しています。赤い羽根共同募金活動にご協力いただきました寄付者の皆さまにお礼申し上げます。

〜寄付をして下さった皆さまへ〜

今回の助成をCAFの行う重症児を含む全ての方の運動機会創出を目的とした競技大会の開催およびスタッフ育成事業の運営に活用させていただき、誠にありがとうございました。

おかげさまで“前橋トライアスロンフェスタ”との連携事業では、今回初めて重度心身障害児とそのご家族に向けて、運動体験会や競技大会の設計を行うことができました。

また、皆さまのご支援のおかげで、障がいのある方とそのご家族の計30名以上の方々に、運動する機会や自身で立てた目標にむけてチャレンジする楽しさ、レースを完走したときや目標達成時の達成感・高揚感を提供することができました。

運動やスポーツは文化活動の選択肢の一部であると考えます。障がいの有無でその活動に制限や機会を損失することがないよう、CAFの活動を継続してまいりますので、応援のほど宜しくお願いいたします。