2024年11月23日、東京都武蔵野市にて「障害者福祉センター講演会」が開催され、今年6大会連続となるパラリンピック出場をはたした現役パラアスリートであり一般社団法人Challenge Active Foundation(以下、CAF)の代表を務める木村潤平が講師として登壇しました。
この日のテーマは「誰もが活躍できる社会へ ~最後の壁は自分の中にある~」。
会場となった武蔵野商工会館には約40名の参加者と関係者が集まり、木村の競技を通じて得た出会いや気づき、それをきっかけに始めた現在のCAF(キャフ)での活動や思いに耳を傾けました。
パラトライアスリートが見てきた世界
「選手村のフランスパンが美味しかった!」
木村が水泳とトライアスロン合わせて自身6度目となったパラリンピック出場の感想をこう切り出すと聴講者の表情も一気に緩み、講演会は和やかにスタートしました。
まずはパリ大会での体験談や現地の様子など、出場選手ならではの視点で笑いも交えながらトライアスロン競技の特徴について紹介。
海外のトライアスロン大会の映像の中で、木村のような下肢障がいの選手だけでなく、上肢障がいやガイドと共に競技に挑む視覚障がいの選手など、さまざまな障がいの選手がレースに参加している様子が投影されると、会場からも驚きの声がもれます。
「海外ではこのようにいろいろな障がいを持っている方がトライアスロンを楽しんでいる姿を見てきました。トライアスロンだけでなくても良いのですが、日本でもいろいろな人たちがスポーツに関わってくれると嬉しいなと、競技をしていると自分もそう思うことがあります」
ターニングポイントとなった“出会い”と“環境”
競技を通じて世界と日本を見てきた木村は、日本でもスポーツを活用してもっとできることがないのか、と考えることが多かったといいます。
「会場の皆さんは、誰もが挑戦できる社会には何が必要だと思いますか? ちなみに私は“出会い”と“環境”があれば誰もが限界を超えることができるのではないか、と思っています」
自身もさまざまなターニングポイントでの出会いを通じて考え方を変える機会があり、環境が変わり、その結果としてパラリンピック6大会連続出場を叶えることが出来たという木村。
一つ目のターニングポイントは高校水泳部の恩師との出会いでした。
「2001年、当時はまだ障がい者は可哀そうという意識が強い時代でした」
普通校に通っていた高校生の木村は自身も障がいがありながら、障がい者の世界とは距離を置き、健常者の中でどう競っていくことができるかということを考えていたといいます。
そんな時、高校水泳部の恩師にもらった「(健常の水泳ではなく)パラ水泳なら、世界狙えるんじゃないか?」という一言が木村の心に火をつけます。
「“世界”という言葉が良かったんでしょうね。生意気な高校生の自分はその言葉に乗っかったんです。でもその一言がなければたぶんスタートしなかった。この一言で自分が勘違いを起こしながらパラ水泳の世界に入ったのは重要なターニングポイントの一つだったと思います」
その後、パラ水泳の世界で勘違いを痛感する体験もしながらも、たくさんの出会いとマインドセットがあり、自身で環境を切り開きながら競技生活をおくってきたといいます。
CAFを通じた新たな挑戦
パラアスリートとして少し特異な経験をしてきたことを活かして伝えられることがあるのではないか、という気持ちが競技生活を通じて高まっていたという木村。
「社会的課題や障がいのある人たち皆一緒に、というと心地よい発言としてよく使われているが、実際それをやり切る文化はなかなか生まれづらい環境に今もあるのではないかと思います。高齢者の方から子どもまで、男女、障がい、国籍など皆一緒にやり切る文化が作れないかと考えています。環境や出会いがあれば、誰もがチャレンジできる可能性はあると思うので、その一歩を踏み出せるようなものを私としてもやりたい」
今木村が代表を務めるCAFでは“誰もがチャレンジできる社会を作る”というミッションのもと、障がいをもっている人たちも健常の人たちと同じように陸上や水泳、ダンス、カヌーなどさまざまなスポーツに触れる経験や選択肢を持てる機会を提供するプログラムを実施しています。
「障がいやハードルがあるから、スポーツ自体が出来ないと思っている方がすごく多いと思うのですが、周囲のサポートや理解があれば本当に皆さんには可能性があるということを伝えたいと思っています。そこには障がいも関係ないですし、それこそ年齢も関係ないと思っています」
「どうやってゴールを目指していくかは人それぞれなので、一人で目指しても良いし、皆の手を借りたって良い。自分もそうですが、一人でやり切ると言っても誰かにすごく助けてもらって競技をしています。そういう意味でいうと、誰かに助けてもらったとしてもやり切ったことはその本人の力ですし、だからこそ応援してくれる人がいたということだと思います」
会場に向けて木村から「トライアスロンと言わずとも、他のスポーツイベントでも良いので、是非興味をもって参加してもらえたら嬉しいです!」と投げかけられ講演は終了しました。
その後の質疑応答では「元気の出るお話をありがとう」 「今70歳だけど、もう一度がんばってみようかな」といった感想も聞かれ、前向きなエネルギーが会場に満ちているようでした。
CAFでは、自治体や地域団体の皆さんと連携しながら「誰もがチャレンジできる社会」に向けて、今後も活動していきます。講演会をはじめ、共生社会に向けた取り組みなど、是非お気軽にご相談ください。
▷お問合せはこちら:https://challenge-active.com/inquiry/
※今回、講演会を実施させていただいた武蔵野市では『心のバリアフリーハンドブック』を作成・配布しています。こちらも是非ご活用ください。
▷『心のバリアフリーハンドブック』(外部サイト:武蔵野市公式HP)